George Karl Interview

　2003年２月20日、ゲイリー・ペイトンが13年半在籍したシアトル・スーパーソニックスからミルウォーキー・バックスにトレードになりました。（ソニックス→バックスがペイトン、デズモンド・メイソン。バックス→ソニックスがレイ・アレン、ケビン・オリー、ロナルド・マレー、ドラフト指名権）　これに関連した記事を書くために、２年前にジョージ・カールをインタビューしたときの一問一答を読み直したところ、今読んでも興味深いので、ここに掲載することにします。取材したのは、バックスがカンファレンス・ファイナルでシクサーズに敗れたシーズン。NBAファイナルも終わり、ドラフトも終わったあとのこと。バックス練習場にあるジョージ・カールのオフィスで、30分以上時間をとって話してくれました。これはインタビュー出だしの部分で、このあとマイナーリーグの話や、彼のコーチ・キャリアの話とつづき、そちらの話も面白いのですが、かなり長いので、とりあえずペイトンと関連した部分だけ抜粋掲載します。


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ジョージ・カール　インタビュー
（2001年６月28日取材）


HOOP2001年9月号　掲載
（ただし、これはHOOP記事からの抜粋ではなく、元インタビューからの抜粋なので、
HOOP掲載記事とは多少順序や言い回しが違うところもあります）


ジョージ・カールのオフィスにて（インタビュー当日撮影）。ジョージ・カールの右手にある窓から見えるのは、ウィスコンシンのすばらしい景色…ではなくバックスの練習コート ──きのうのトレード（2001年６月27日、バックスはレイカーズにリンジー・ハンターを出し、かわりにグレッグ・フォスターを獲得）の話から聞かせてください。トレードの目的は何だったのでしょう？
「私たちにとっては、基本的に、ティミー・トーマスのプレー機会を広げるためのトレードだった。ティミー・トーマスはオールスター級の才能を持った選手だと思っている。しかし、昨シーズンは１試合25〜27分しか出場時間を与えられなかった。もっと彼をプレーさせる必要があると思った。来季はティミーはレイ（アレン）やグレン（ロビンソン）の控えとしても起用、１試合30分くらいのプレイタイムを与えたいと思っている。リンジーは出場時間や役割が減ることに不満を持つだろうと思った。つまり、ティミー・トーマスにもっとプレーする機会を与えるためのトレードだった」

──ティム・トーマスはプレイオフではＰＦだったと思うのですが…。
「彼はＰＦもするし、グレンのバックアップとしても使った。とにかく、彼の場合はもっとコートにいる必要があると思った。すべてのポジションでプレーしてもらうことになりそうだ。それで彼が満足してくれることを願っている」

──つまりガードやフォワードとは限らないと？
「とにかく、昨季以上のプレイタイムを与えたい。平均して26分くらいの出場時間だったのを30分くらいにしたい。２番の控えとしても起用することで時間を増やせればと思っている。場合によってはビッグラインナップも使うかもしれない。それでうまくいくかどうか試してみるつもりだ」

──それでは、このトレードはゲイリー・ペイトンのためにＰＧのポジションを整理した、というわけではない？
「ん〜（肯定も否定もせず）、みんな知っているように、私はゲイリーが好きだ。シアトルは彼をトレードしようという方針をはっきりと打ち出している。私たちはそのトレードをまとめることができるのか？　hot（実現間近）というわけではないけれど、だからといってdeadの（完全になくなった）話でもないと思う。シアトルとの場合は、私とウォリー・ウォーカーとの関係のこともあるからね。私たちはお互いにあまり協力しあわない。だからといって私たちがゲイリーに興味がないというわけではない」

──トレードの交渉などであなたも他のチームのＧＭなどと話すことがあるのでしょうか？　確かＧＭの仕事には興味がないと言っていましたよね？
「興味ない。もちろん、私は交渉はしない。それはすべてアーニー・グランフェルドの仕事だ」

──ということは、ウォーリー・ウォーカーとあなたとの関係はそれほど直接関係してこないのでは？
「ウォーリーは、いつでも私を助けないようにしているように思える。私のほうも、彼の助けないようにしているかもしれない」

──それでも、チームのためになると思えばソニックスと話し合うこともある？
「もちろん。私たちはゲイリー獲得に興味がある。そのことは昨シーズンから言っていることだ。ゲイリーはすばらしい選手だ。ただ、うちには今もいいポイントガードがいる。チームに悪い影響を与えたり、崩壊させたりしたくはない。動くとしたら、それはチームをよくすると判断したときだけだ。もしチームがよくならないと思えば何もしない。今いるメンバーで来シーズンも戦うだけだ。今もいいチームだと思っているからね。しかし、もし絶対的にこのチームをよくすると思うような話があれば、それは実行する。そして、ゲイリー・ペイトンはこのチームを確実によくするような選手だと思っている」

──あなたはＧＭではないとのことでしたが、人事に対しての発言権はありますか？
「私がミルウォーキーに来てから、このチームは人事に関して私がリクエストしたことすべてをやってくれている。アーニーと私はとてもいい関係にあり、アーニーは私が反対することは何もしないと思うし、私もアーニーが反対することは何もしない。私たちは、お互いに拒否権を持っているような関係で、とてもうまくいっていると思う。できる限りみんなの求めることが一致するようにも努力している。とてもうまくいっている。私は細かな電話やコンピューターを使った疲れる仕事をしなくてすむ。彼（グランフェルド）が話を持ってきて、それに対して私がイエスといったり、ときにはノーと言ったり、私がイエスと言って彼がノーと言ったり。そういうやり方でうまくいっている」

──最近では、ＧＭ兼任を求めるコーチも増えているように思うのですが…。
「私もＧＭのパワーは持っていると思う。ただ、ＧＭの仕事をしていないだけだ。バックスは私の了解なしに何もしない。ただ、毎日のＧＭの仕事、リーグ・オフィスと話したり、代理人と電話で話したり、サラリーキャップの状況について話したり、契約の交渉をしたり、そういったことを一切しないだけだ。チームは私の了解なしに何もしないし、これは私にとって最高の状況だと思う。私には、１日のうち、コーチとＧＭと両方をするだけの時間はないからね。チームが私に敬意を払ってくれ、人事に関して決断するときに私の意見を取り入れてくれる」

──それだけ疲れることなら、ほかのコーチたちがどうやってコーチとＧＭを兼任してやれるのだろうと思ったりはしませんか？
「コーチがＧＭの仕事もするのはいいと思うね。そのほうが、彼らはそれだけコーチの仕事をするのに疲れるだろうからね。自分には両方の仕事をする才能があると思っている人も多いようだ。確かに、頭脳的にはその才能があるのかもしれない。しかし、両方の仕事をするだけのエネルギーがあるのかどうかは疑問に思う。私にとっては、コーチだけでもかなりのエネルギーや集中力が必要だ。コートを離れたあと、フィルムを見て休む以外は何もしたくないときもある。もしＧＭも兼ねていたら、さらにデビッド・スターンに電話したり、審判に電話したり、コーチ協会に電話したりという仕事が待っている。私にはそれはできない。私にはできない。そんなことをしたら私は怒りっぽく気分にムラがある人間になり、人間性が消耗してしまう」

──そのほかにも、ＧＭは将来的に長い目で物事を考えなくてはいけなくて、コーチは毎日の結果を出さなくてはいけないと、両方の仕事には矛盾するところもでてきますよね？
「それは確かにそうだ。コーチはいま勝ちたい。チームは５年計画で考えている。コーチを始めた最初のころは、私もその対立で苦労した。今は、以前に比べるとだいぶ温厚になってきて、自分の方針の中に将来に対する配慮を入れる余地をもたせられるようになった。とはいえ今でも勝つことが大事だ。ミルウォーキーで何が一番楽しかったって、早くに勝てるようになったことだ。この先は勝つことを主張していかなくてはいけない。勝つこと以外は受け入れないというような伝統を作っていかなくてはいけない。そのことを選手にもファンにも理解してもらうようにね。優秀であることが基準になり、チームの一員であることが楽しめるような状況を作りたい」

──ゲイリー・ペイトンの今の状況についてはどう思いますか？　今回だけでなく、この数年、幾度となくトレードを要求していますよね。なぜ、そういったことになるのでしょうか？
「基本的に、私が離れてからシアトルは多くの騒動を経験している。不満や多くの失敗。そして、今は解決策を探しているところだ。ゲイリーは辛抱強い人間ではない。どちらかというとせっかちなほうだと思う。勝ちたいと思い、再びプレイオフに戻りたいと思っている。ゲイリーはＮＢＡファイナルに戻りたいという気持ちが強いのだと思う。そういったことが現実だったのはわずか数年前。それなのに、この３年ほどは失敗続きだ。彼の忍耐力は下がってきている。基本的に彼は、ここで勝てないのなら、勝てるチームに行きたい、と言っているのだと思う。ゲイリーはすばらしい選手だ。今は辛抱強さを失っているのだと思う」

──あなたがコーチした選手でもうひとり、いろいろと問題を抱えている選手がいますよね。ショーン・ケンプの状況についてはどう思いますか？
「今現在、ショーンの友人としては、彼が自分の人生についての解決を見出すことを願うだけだ。そのうえでバスケットボールが人生の一部になるのならすばらしいことだし、もし中毒（麻薬）をなおすためにバスケットボールからしばらく離れていなくてはいけないということなら、そうするべきだ。前より状態はよくなってきていて、体重も減らしているという話を聞いている。人間として強くなって戻ってきてほしい。そうすることで、選手としてすばらしかった面を取り戻すことができるかもしれない」

──彼と直接話はしているのですか？
「直接は話していない。リハビリに入ってからは外部の人間と話すことを禁止されるから、今まではその機会がなかった。最近になって、話せる状態になったと聞いたので、この夏の間に交流をもち、食事でもいっしょにしてゆっくり話をする機会があればと思う」

──シアトル時代の選手たちとは、今でも親密な関係を保っているのでしょうか？
「ショーンとゲイリーは特別な選手だった。あとはネイト・マクミラン、サム・パーキンズ。シアトルのときの多くの選手とかなり親密な関係を保っている。あのときのチームは特別なチームだったし、私たちは特別な時間をいっしょに過ごしたからね」


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